キャパシタは電気エネルギーを蓄えることのできる素子ですから、当然のことながらより多くのエネルギーを蓄えることのできる大容量型も求められます。
私たちは、グラフェンとカーボンナノチューブを使って、大容量のキャパシタを作っています。実は、一般に大容量キャパシタは、その容量の他に以下のような特徴を持っています。
メリット | その結果 |
瞬間的に大きなエネルギーを充電・放電できる。 | 秒速充電が可能 |
過酷な使用環境温度にも使える。 | -40℃~+70℃までOK |
充電・放電を繰り返しても劣化しない。 | 100万回OK |
安全性が高い。 | 燃えにくい、爆発しない |
小型のキャパシタと大型のキャパシタは、それぞれの特徴を生かして、従来、次のような使われ方がされてきました。
小型のキャパシタは主に「メモリーバックアップ用電源」「リアルタイムクロック用電源」に使われています。
一方、大型のキャパシタはコピー機の定着ローラの加熱ヒーター用途、瞬間電圧停止低下補償装置システムの秒単位のバックアップ電源などに採用されています。しかし、他の二次電池との決定的な差別化が出来ない為にこれ以上の応用の分野の広がりが進んでいないのが現状です。
現在、私たちが作っているグラフェンとカーボンナノチューブからなる新しいキャパシタは、大容量キャパシタを実現するものですが、従来のものとは、違う特性を持っています。
従来の材料(ヤシ柄活性炭)での大容量キャパシタの電圧特性は2.5~2.85Vですが、グラフェンカーボンナノチューブでは3.2~3.7V、場合によっては4.2Vを実現します。キャパシタの容量は電圧の2乗に比例するので容量も従来のキャパシタに比べて3~4倍の容量となります。従って、大規模な「蓄電パック」もサイズの小型化が実現します。
例えば300Vの電源パックであれば2.5Vでの搭載量は120本のセルが必要ですが、3.7Vのセルであれば80本のセルで済み、つまり電源パックの体積が40%のダウンサイジングが実現して材料コストも大幅な削減が可能になります。
このような特徴を使って以下のような分野で利用が期待されます。
自動車分野 | 回生エネルギー蓄電、パワーアシスト電源 |
再生エネルギー分野 | 電力の安定化電源、系統連系システムの信頼性向上 |
重機・建設機械分野 | 低温環境下など過酷な環境での頻繁な充放電性 |
ソーラーシステム分野 | 微弱光の環境での充電 |
燃料電池分野 | パワー密度の優位性との組み合わせ(フォークリフト等) |
IOT分野 | ワイヤレス通信などの電源 |
鉄道分野 | 回生エネルギーの蓄電で省エネの向上 |
スペース分野 | 太陽電池からの電力の蓄電システムの信頼性 |
車両用ワイヤレス充電分野 | 走行距離に合わせてリチウムイオン電池の搭載するのではなく、キャパシタで「チョコチョコ充電」しながら走行する為の電源 |
マテリアルイノベーションつくばが開発した「グラフェンカーボンナノチューブ材料」の量産化により、「電池」か「キャパシタ」という選択ではなく、グラフェンカーボンナノチューブキャパシタの新たな用途の可能性が製品開発者に提供できる時代に入りました。